ユニツキシンについて
開発の経緯
ユニツキシン[一般的名称:ジヌツキシマブ(遺伝子組換え)]は、遺伝子組換えキメラモノクローナル抗体であり、ヒトジシアロガングリオシド2(GD2)に特異性を有するマウス抗ガングリオシドGD2モノクローナル抗体の可変部及びヒト免疫グロブリンG1(IgG1)の定常部から構成される分子量約150,000の糖タンパク質である。
ジヌツキシマブ(遺伝子組換え)は、GD2に対する抗体であり、神経芽腫細胞等の細胞膜上に発現するGD2に結合し、抗体依存性細胞傷害(antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity:ADCC)活性及び補体依存性細胞傷害(complement-dependent cytotoxicity:CDC)活性により、腫瘍増殖抑制作用を示すと考えられている。
ユニツキシンの海外における開発は、当初、米国国立がん研究所(National Cancer Institute:NCI)により製剤開発及び臨床開発が進められ、その後、United Therapeutics Corporation(UTC)が開発を引継ぎ、2010年12月20日に米国食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)からオーファンドラッグの指定を受けた。2009年にNCIの支援により、米国小児がん多施設共同臨床試験グループ(Children’s Oncology Group:COG)が実施した、大量化学療法を含む集学的治療施行後に疾患進行が認められない高リスク群神経芽腫患者を対象とした海外第Ⅲ相試験(DIV-NB-301試験)では、ユニツキシンを顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(granulocyte macrophage colony-stimulating factor: GM-CSF)、インターロイキン-2(interleukin-2:IL-2)及びisotretinoin(RA)による分化誘導療法と併用した場合、RA単独療法と比較して無イベント生存率及び全生存率の推定値が改善することが示され、ユニツキシンをGM-CSF及びIL-2と交互に併用するユニツキシン免疫療法の有用性が確認された。その後、UTCにより承認申請が行われ、米国では2015年3月10日、カナダでは2018年11月28日にそれぞれ「Unituxin(dinutuximab)is indicated, in combination with granulocyte-macrophage colony-stimulating factor(GM-CSF), interleukin-2(IL-2)and 13-cis-retinoic acid(RA), for the treatment of pediatric patients with high-risk neuroblastoma who achieve at least a partial response to prior first-line multiagent, multimodality therapy」の効能・効果で承認された。
国内における臨床開発は2011年10月に開始された。国内開発におけるレジメンは、国内既承認薬としてIL-2製剤はテセロイキン(遺伝子組換え)、顆粒球コロニー形成刺激因子(granulocyte colony-stimulating factor:G-CSF)製剤はフィルグラスチム(遺伝子組換え)を併用し、RAは国内未承認のため使用しなかった。本レジメン(G療法
*)は大量化学療法を含む集学的治療歴のある神経芽腫患者を対象とした国内第Ⅰ/Ⅱa相試験(GD2-PⅠ試験)にて忍容性が確認され、大量化学療法を含む集学的治療施行後に疾患進行が認められない高リスク群神経芽腫患者を対象とした国内第Ⅱb相試験(GD2-PⅡ試験)にて米国レジメン群に対する2年無イベント生存率の非劣性が確認された。
以上の臨床試験データに基づき、製造販売承認申請を行い、2021年6月、以下の内容にて承認された。
*G療法:ユニツキシン+フィルグラスチム(遺伝子組換え)+テセロイキン(遺伝子組換え)[DIN/FIL/TEC群]
ユニツキシン点滴静注17.5mg/5mL
効能又は効果:
大量化学療法後の神経芽腫
用法及び用量:
フィルグラスチム(遺伝子組換え)及びテセロイキン(遺伝子組換え)との併用において、通常、ジヌツキシマブ(遺伝子組換え)として1日1回17.5mg/m2(体表面積)を10~20時間かけて点滴静注する。28日間を1サイクルとし、1、3、5サイクルは4~7日目、2、4、6サイクルは8~11日目に投与する。
特性
1
ユニツキシン[一般的名称:ジヌツキシマブ(遺伝子組換え)]は、遺伝子組換えキメラモノクローナル抗体であり、マウス抗ガングリオシドGD2モノクローナル抗体の可変部及びヒトIgG1の定常部からなる。
2
ジヌツキシマブ(遺伝子組換え)は、GD2に対する抗体であり、神経芽腫細胞等の細胞膜上に発現するGD2に結合し、抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性及び補体依存性細胞傷害(CDC)活性により、腫瘍増殖抑制作用を示すと考えられている。また、ジヌツキシマブ(遺伝子組換え)は、in vitroにおいて、ヒト神経芽腫由来SMS-KCN、SMS-LHN及びLA-N-1細胞株に対して、ヒト末梢血単核球又は好中球存在下で増殖抑制作用を示した。
3
本剤は「大量化学療法後の神経芽腫」を対象として、日本国内開発のレジメン(G療法*1)で承認された。なお、本レジメンの忍容性については、大量化学療法を含む集学的治療歴のある神経芽腫患者25例を対象とした医師主導による国内第Ⅰ/Ⅱa相試験(GD2-PⅠ試験)にて確認された。
4
日本国内開発のG療法*1の有用性を検討するため、大量化学療法を含む集学的治療施行後に疾患進行が認められない高リスク群神経芽腫患者35例を対象として、米国レジメン(サルグラモスチム※、アルデスロイキン※及びイソトレチノイン※との併用療法)との比較が国内第Ⅱb相試験(GD2-PⅡ試験)にて検討された。主要評価項目である2年無イベント生存率(95%CI)は、G療法群が80.8(51.4-93.4)%、米国レジメン群が62.3(36.7-80.0)%であり、G療法群の米国レジメン群に対する非劣性(ハザード比:0.494[片側70%CIの上限:0.710])が認められた。
5
GD2-PⅡ試験で比較対照となった米国レジメンの有用性は、大量化学療法を含む集学的治療施行後に疾患進行が認められない高リスク群神経芽腫患者251例を対象とした海外第Ⅲ相試験(DIV-NB-301試験)にて検討されており、イソトレチノイン※単独療法群との比較において、無イベント生存率及び全生存率の有意な改善が認められた(p=0.0115、0.0223[ログランク検定])。
6
重大な副作用としてinfusion reaction*2、疼痛、眼障害、毛細血管漏出症候群、低血圧、感染症、骨髄抑制、電解質異常があらわれることがある。
主な副作用(50%以上)は、低アルブミン血症、ALT増加、顔面浮腫、AST増加、GGT増加、便秘、倦怠感、食欲減退、下痢、血中尿素増加である。
詳細は、添付文書の副作用の項及び臨床成績の項の安全性の結果を参照。
*1 G療法:ユニツキシン+フィルグラスチム(遺伝子組換え)+テセロイキン(遺伝子組換え)[DIN/FIL/TEC群]
*2 infusion reaction
国内及び海外の臨床試験においてinfusion reactionと特定された有害事象が認められた。
infusion reactionは注入に伴う反応で発熱、嘔吐、咳嗽、悪心、低血圧、悪寒、潮紅、ほてり、頻脈、気管支痙攣等を含む。
サルグラモスチム、アルデスロイキン、イソトレチノインは国内未承認の薬剤です。